2017年11月25日土曜日

【書籍推薦】ポップで骨太に織り成されるグルメと人間ミステリードラマ 『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』

https://honto.jp/netstore/pd-book_26439314.html
店主の麻野が和洋中で織り成す手作りスープが

人気のスープ料理屋「しずく」には、店主のとあ

る思いで秘密で提供している早朝の営業時間が

あった。早朝出勤の途中に、店を偶然知ったOL

の奥谷理恵(おくたに・りえ)は、すっかりこの店

のスープの虜になる。


彼女は最近、職場での対人関係がぎくしゃくし、

大切なポーチの紛失事件も起こり、ストレスから

体調を崩しがちだったが、店主でシェフの麻野

https://honto.jp/netstore/pd-book_27668719.htmlは、彼女の悩みを見抜いて、見事にことの真相

を解き明かす。


ここから身も心も解してくれるスープ料理の数々

と様々な人間模様とミステリーがオムニバスで

織り成されていくのだが、店主の麻野暁(あさ

の・あきら)には言葉では言い尽くせない過去が

あった……。






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 【料理・食材関係の推薦過去記事】
 ● 小説 天見ひつじ 『深煎りの魔女とカフェ・アルトの客人たち』
 ● 漫画 里見U 『八雲さんは餌付けがしたい』
 ● 小説 辻仁成 『エッグマン』
 ● ノンフィクション G.ブルースネクト 『銀むつクライシス』
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https://honto.jp/netstore/pd-book_28722651.html
最近は、三菱商事の社内ベンチャーとして始まったスー

プストック・トーキョーの全国展開と共に、「スープのある

1日」という概念がブランドとして定着した感があるなか

本書はポップな小説ながら、料理の薀蓄、栄養学、育児

問題、狩猟とジビエ、地場野菜など、様々な参考文献を

しっかりと下敷きにして、思わずスープが食べたくなる描

写と、人の複雑な苦しみや悩みが解きほどけていく過程

を織り合わせることで、上質の娯楽作品に仕上がってい

ます。



登場するスープも「ジャガ芋とクレソンのポタージュ」「ソー

セージのポテ」「ロードアイランド風クラムチャウダー」など

読んでいる傍からレストランに行きたくなる品書きの数々。


 
本書は色々な謎解きが出てきますが、店主の麻野さんは

決して探偵ではなく、お店に関わる人たちの声を聞き、日

々最高のスープ料理を提供することで、誰かのパワーに

なろうとする存在なのがポイントです。彼自身、「どんな複

雑な味のスープにもレシピは存在する。つまりどんな結果

にも、かならずそうなった理由が存在する」と、知識と経験

の両方で問題解決が出来る人なのですが、謎や人の悩み

に深く入りすぎないように気を配っていて、逆にそれが本作

の味わいを引き立てています。



どうして朝食なのか? 理由は本を読んでもらうとしてそこに

あるのは、紛れもなく忙しく現代を生きるわたしたちがこころ

のどこかで求めている「宿り木」のある朝なのかもしれない。

本書はそんな人の悩みを癒すハートフルさに満ちています。



奥谷と店主・麻野の関係など、これからの進展が楽しみな作

品です。

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