村、カマーマン出身のバンドであるステレ
オフォニックスは21周年を迎えたが、○周
年記念的な新曲入りベスト・アルバムでは
なく、最新アルバムを発売したことに、ファ
ンとして個人的にそのミュージシャン魂を
嬉しく思っている(なお、ベスト盤商法を必
ずしも悪いと思っているわけではない)。
彼らはデビューアルバム『ワード・ゲッツ・アラウンド』(97年)で
故郷カマーマンの日常を、ストレートに力強く歌い一定の評価
を得てから、王道のロック、米国の南部サウンドやオルタナテ
ィブ・ロックなどを吸収しながらUKの豊潤なポップを同居させた
音楽性で成長してきたが、今回の最新作も「前進あるのみ」の
精神で満ちている。
王道バンドは通常、作曲の面で壁にぶつかりやすいものだが
彼らは今回、ダンス・ミュージック、80年代調のシンセ・サウンド
の他、ポップなR&B、ホーンなどを取り入れながら、かつ、普遍
性のある曲に仕上げており、聴き応えのある一枚になっている。
まぶしく煌くギターのリフレインが特徴的なOP曲、『コート・バイ・ザ・ウ
インドウ』は、「森に潜む狼たちはルールなんておかまいなし 願いごと
はなんでもかなう 何でもありなんだ」と歌い、バンド自身と観客に勇気
を出してくれ、と真っ直ぐに鼓舞するかのようです。
映画のストーリーテリングを想起させる歌詞に、80年代調のシンセ
サウンド、ケリー・ジョーンズのメランコリックな歌声が織り成すこの
『オール・イン・ワン・ナイト』は、架空の映画の劇中曲を想像させる
ようで(ヨーロッパ映画の雰囲気がします)、彼らの挑戦の最たるも
ので、かつ、普遍的魅力に満ちているのではないだろうか。
大きな声で叫ぶだけがロックではない。誤解を恐れずに言えば
ロックは人生を上手に生きれない人間の歌だ。この『ビフォア・
エニワン・ニュー・アワ・ネーム』で青年時代からのバンドメイトで
初代ドラマーの今は亡きスチュワート・ケーブルに向けて、「俺達
どうなった? なるはずだった大人?」と抑揚の効いたトラディショ
ナルなピアノ弾き語りで寂しさを語っている。
21 周年目を迎えても、色々挑戦する彼らに今後とも期待したい。
0 件のコメント:
コメントを投稿