止するために闘った特殊工作員たちがいた!開
発の鍵となる「重水(ヘビーウォーター)」製造工
場を破壊する任務のため、ノルウェーの男達は
極寒のノルウェーを舞台に第二次世界大戦で最
も困難かつ最大の秘密工作に挑んだ。この全貌
をドラマティックに描き切る、傑作戦記ノンフィク
ションが世に出ました!
歴史に「もし」は無いが、「もし」ナチスが原爆開
発に成功していたら歴史はどうなっただろう?
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【戦史関係の推薦過去記事】
● ルポ 『レッド・プラトーン 14時間の死闘』
● 映画 『ゼロ・ダーク・サーティー』
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このノルウェーのテルマルク県におけるノルスク・
重水工場破壊工作は、65年の英・米国製作映画『テレマー
クの要塞』(主演はカーク・ダグラス)でも有名であるし、児
童向けの難しめの歴史本で語られていたこともあったと記
憶しているが、どうもその後は影に隠れた感があった。核
開発の歴史を学ぶ上で、押さえて欲しい教養であると思う
なか、著者のニール・バスコム氏は記録や、目撃者の証言
と現地取材を通して、いかに決死の作戦が決行されたかを
描いている。
本書は戦史における痛快な特殊部隊の活躍ストーリーでは
ない。1938年に発見された核分裂プロセスを発端に、ドイツ
と英国、米国の疑心暗鬼のなかでの兵器としての原子力の
開発レース、郷土愛に満ちてはいるが「寄せ集め」で、短期
間集中訓練でコマンド隊員になって、作戦地域に投入された
ノルウェー人の極寒環境でのサバイバル戦と、部下を危険に
投入しながらも自分は銃後で指揮をとる将校で物理学者でも
ある上官の苦悩、ナチスの秘密警察にいつ逮捕される危険
のなか現地で諜報活動にあたるノルウェー人情報員の勇気
など、原子力開発の科学史、組織論、戦史、と様々な要素で
読者の胸に迫ってきます。
特に「炎も凍る」という極寒のハンダルゲン高原での長期潜伏
のサバイバル戦は読んでいるほうも凍えるような筆力です。
テクノ・スリラーのエースであったトム・クランシーは小説『恐怖
の総和』で核兵器テロの危険性と、テロ後に政策者の胸中に
宿る疑心暗鬼の恐怖感がもたらす核攻撃による報復の可能
性を提示したが、残念ながら1945年8月6日の広島への原爆
投下以来、核兵器廃絶の道筋はいまだ見えないどころか、朝
鮮半島をはじめ、核がもたらす「恐怖の総和」は増え続けてい
る。
現在唯一生存する、ノルウェー人工作員が語った次の言葉が
読者の胸に切実に訴えかけてくる。
自由のためには自分で戦わなくちゃならない。
平和のためにはね。毎日戦って守っていくんだ。
それはガラスの船のように壊れやすいものだから。
すぐになくしてしまうものだから。(p.509)
本作はマイケル・ベイ監督(『アルマゲドン』など)による映画化
も予定されており、どうなるのか楽しみなところです。
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