アパートにひとり暮らしをする、寡婦(未亡人)
の八雲柊子(やくも・しゅうこ)の趣味は、読書と
料理だが、誰にも言えない秘密があった。それ
はなんと、 隣の部屋に住む高校球児の大和翔
平(やまと・しょうへい)を密かに「餌づけ」するこ
とだった!
凄まじい食欲を誇る、男子高校生の胃袋に翻
弄される日々のなかで、料理をする柊子の心
は色を取り戻し、ふたりの不思議で微笑ましい
関係が織られていく---
年上女性と青少年の関係作品は、以前紹介し
ました『私の少年』では、ふたりの繊細で不可
思議な関係と情愛(と言うことにする)が主軸に
描かれてましたが、本作では思わずお腹がす
きそうになる料理の数々と主人公ふたりの心
温まる関係が描かれる「飯テロなギャグ漫画」
なのが特徴です。
思春期の食べる幸せってこうかと思わせる。
さて、寡婦(未亡人)がヒロインを務める漫画は高橋先
生の「めぞん一刻」が金字塔ですし、野球ではあだち充
先生の作品が輝いているのは言うまでもないなか、作
者の里美U氏は、食べ盛りの高校球児と料理上手な未
亡人という関係に、少々変わり者の脇役を適時混ぜて
話を展開させるという、ありそうでなかった市場を開拓
することで、過去の名作の圧力を回避しているところに
作者・里美U氏の胆力を感じる。
料理を扱った作品でありながら、グルメ系にはならずに
あくまで、「御飯を与える幸せ」「御飯与えられる幸せ」
の関係性に視点をあてており、青年誌ならではのお色
気ギャグ描写もあるが、あくまで料理が繋ぐ八雲さんと
大和くんのハートフルな「食卓関係」をメインにしてある
のが特徴で、ゆっくりと息抜きに読むには最適です。
ふたりの関係は決して「ラヴ」ではないのだろうけども
作中で、八雲さんが大和くんに「ある人」の姿をなんと
なく重ねるところや、大和くんの照れくさい表情にも注
目してほしい。何よりこの作品は人に何かを与える喜
びは、人に何かをもらう喜びよりも大きいという大切さ
を下敷きにした作品でもあるからです。
高校球児、大和くんの球児としての成長はどうなるか?
これからの連載で、ふたりがどんな食卓を織り成すのか
楽しみな作品です。
0 件のコメント:
コメントを投稿