「何故、僕を選んだ---」
インテリジェンス関連の書籍を開くと、人がスパイになる理由
は、次のように言われる。
第一にお金(金銭的困窮)、第二にはイデオロギー(特定の思想に
強く共鳴しており、その思想が掲げる理想を社会で実現するため
にスパイになる)第三に自分の名誉や立場を守るため、最後の第
四はエゴイズム(所属している組織や周囲からの評価に強い不満
を持っているため)がスパイになる/されてしまう動機となる。
今回紹介する作品はクラシックスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレ
の小説を映画化した、「われらが背きし者」です。
イギリス人大学教授ペリーと妻のゲイルは、モロッコで休暇中に
ロシアンマフィアのディマと偶然知り合う。ディマから組織のマネー
ロンダリングの情報を聞いたペリー夫妻は、1つのUSBメモリを
MI6に渡してほしいとディマに懇願され、突然の依頼に困惑しつ
つもディマと彼の家族の命が狙われていると知り、その依頼を
仕方なく引き受けてしまう。それをきっかけに、ペリー夫妻は世
界を股にかけた危険な亡命劇に巻き込まれていく.....
余談ながら主演のユアン・マクレガーが、映画『ムーランルージュ』で
達者な歌声を披露したとき、彼の歌声がカワイイなぁと評した女性客
の会話があったことを妙に覚えています(笑)
ともあれ、全体として気品のある秀逸で古典的な英国スパイ/サスペ
ンス作品となっていることと、詩分析の凡庸な大学教授ユアン・マクレ
ガーとロシアマフィアの資金洗浄役の親分を演じる、ステラン・ステル
スガルドの渋い演技が「決して遠い世界の出来事でないスパイサスペ
ンスの恐怖と緊迫感に巻き込まれるかもしれない現実」に観客を巻き
込んでくれる。
果たして亡命作戦の結末は?
僕が考えるこの作品のキーポイントは次の二つあると思う。
何故、ステランがユアンを協力者(スパイ役)に選んだ本当の理由は?
作品名にある、主人公たちが背いた者とは?
「信義を重んじる」
冷酷さと裏切りだらけの国際金融資本主義の世界にあって、何とか
あらんとしようと駆け回り続ける、主人公たちと共にこの答えを是非
探してください。銃撃戦だけがスパイサスペンスの答えではないので
すので。
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