2016年10月29日土曜日

【美術展雑感:アドリア海の女王の輝き】 国立国際美術館『ヴェネチア・ルネッサンスの巨匠たち』



国際国立美術館は、美術館の主要部分が地下3階構造になって

いる、世界的に見ても珍しいスタイルになっている。そして地上部

の格子風のモニュメントは、ルーブル美術へのリスペクトとされて

ます。

大阪水都/中之島ライフを素敵に過ごす上で、この川沿いの美

術館は、「東洋のブルックリンとしてのミュージアム」と思ってます。

初期昭和レトロな建物が現代性と混在するこの街だからこそ。




                   ジョヴァンニ・ベッリーニ
                 《聖母子(赤い智天使の聖母)》
                        油彩/板 77 × 60 cm



日伊国交樹立150周年特別展となる、『ヴェネチア・ルネッサンスの巨

匠たち』は、本当に素晴らしかったです。「自由奔放な筆致による豊か

な色彩表現、大胆かつ劇的な構図を持ち味とし、感情や感覚に直接訴

えかける絵画表現の可能性を切り開いていきました」との説明に、さも

ありなんと感じた。フィレンツェの緻密な作風と違って、どの作品の画風

も「カジュアルさ」が溢れていました。


群雄割拠、他国の侵略も絶えないイタリアにあって、一先年もの
長きにわたり交易で欧州を席巻、自由と独立を守りつづけた海
洋国家ヴェネチア。異教徒との取引に積極的であった一方、聖
地奪還を旗印にする十字軍に加担しつつ、これを巧みに利用して
勢力範囲を着々と拡大する--- 【略】 
(塩生七生『海の都の物語』の解説より)


異端審判、魔女狩りや、宗教抗争とも無縁だった、ヴェネチア共和国の

自由さと繁栄を感じさせる作品たち。「肉体の眼で見るのではなく、知性

の眼で見るべきだ」、とゲーテが彼の共和国を評した意味を感じさせられ

ました。塩野さんの言葉を借りれば、有利と判断した場合意外は、一度も

モラリストであろうとしなかった民族であった、という。




なので、聖母子画のように「古典的で行儀良い」作品が見受けられない

わけが、何となくわかった気がしました。事実、ヴェネチアはナポレオン

の侵攻まで1千年継続した「政治の技術力」の国家であったのだから。





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