2016年10月22日土曜日

【書籍推薦:国益を守り、自分の良心に戻るがための歴史観を得るには?】 『戦略外交原論』


著者は、在大韓民国日本大使館公使。早稲田大学の

非常勤講師(09年から10年)として「外交政策の形成

過程」という講座を担当する際に、次年度の学生の講

座のために講義記録を読本としてまとめた結果、言う

なれば手製の教科書になった、『戦略外交言論』の紹

介をします。












同書のタイトルからして戦略戦術的なイメージが当初は強かったが

最も感じさせられたのは、国家という巨大な人間集団が垣間見せる

動物的生存本能と、人間一人ひとりの心の底で輝いている良心が

僕らの暮らす世界の人間集団を突き動かしていくという主張である。


国家を突き動かすものは、経済、軍事、思想(価値観)が基本軸になる。
 

この観点から同書を読んでも、国際政治経済ニュースをより深く

楽しんだり、各自が思案し議論するに足るものではあると思うが

まずは、外交官の武器である言葉を使う人間という生き物を

どう認識するべきであろうか、という議論を前提にして主要各国

経済軍事力思想歴史観から守るべき国益の考え方など

や、国際情勢の戦略的判断を述べているのが本書の秀逸な点で

あると思います。



議会制民主主義の源流であり、ジョン・ロックに代表される啓蒙

思想の力人間には理性があり、社会を自分達の理性で知的に

再構築していける)は強烈な魅力を秘めていると同時に、ナショ

ナリズムや、ポルポトの虐殺のように、致命的な傲慢さを生んで

しまうことや、急進化してしまう危険性を著者は指摘している。



  良心とは、何度も言うように、遺伝子に刻まれた機能であり、普遍的

  存在である。そして人間は、良心がが発する言葉を共有して、人間

  社会を構築する。その過程で良心が生存のためによいことだと判断

  することが「善」であり、その逆が、「悪」である。同じような事象対して

  善悪の判断が繰り返され、固まってくると信条(belife)と言われるよう

  になる。信条が体系化されたものが価値観である(values)である。
 
  p.8 人間の作る社会をどう認識するか



この「価値観」(values)を守ることが、国益を守るということになるの

だが、常に「自分の良心に戻ったり、迫ったり」することが出来ない

人間(外交官)は魔にハマる(違う言葉を使う者を理解できないので

言葉を武器にすることができない。人間は同じ過ちを幾度となく繰り

返してきた)、と著者は警鐘している。


繰り返しになるが、本書は戦略・戦術的イメージのタイトルとは逆に

むしろ、「国家という生き物」の生き方や考え方を切身や乾物などで

はなくて、生きたまま、丸ごと理解することを目的としている。


米国、ロシア、中国、朝鮮半島、関与政策と、幅広く説明してあり、国

際ニュースを見ながらゆっくりと紐解くならば、本書は世界を見るとき

の視野を広げる手伝いをしてくれる優良な一冊になるかと思います。


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