読書は、心の飢えを満たす行為だと思う。
誰かも自分と同じように悩んでいる、あんなふうに生きたい、仕事や
人生の答えを探したい、笑って幸せになりたい、というふうにページ
をめくると、貴方の知らない「世界と人生」が貴方の前の前で何事か
を示唆してくれる。
どれが好きっていうのではなくて、本を一冊読むたびに、自分のなか
の窓が開く感じなんだな。どの物語にも、それぞれきびしい状況が
描かれてるから、それを読むと自分の人生が細かいところまではっ
きり見えてくる。そんなふうに、これまで読んだ本全部がいまの自分
を作ってくれたし、人生の見方も教えてくれたんだ(p.122)
今回紹介する本は、「simple」読書会 大阪さんで出会った一冊なので
すが、カナダのコリンズ・ベイ刑務所に実際にある読書会の一年を追
ったノンフィクション『プリズン・ブック・クラブ』です。驚くなかれ、様々な
前歴を持つ受刑者が集まる刑務所のなかでの読書会なんです。
著者のアン・ウォームズリーは全米雑誌賞を4度受賞するなどの栄光
に輝くジャーナリストで、本書は著者が投資顧問会社の主任ライター
職を解雇されたあと、友人とのウォーキングで刑務所の読書会プロ
ジェクトに選書役として参加しないか、と誘われるところから始まる。
注目すべきは、読書会が刑務所の更正プログラムで強制参加している
ものではなく、受刑者の自由意思で参加するプログラムであることだ。
正直、私は服役者更正については門外漢だが、この作品を読んでいる
と読書には「更正」を助ける力があるのでは思えてくる。
彼らは、『怒りの葡萄』、『賢者の贈りもの』、『またの名をグレイス』など
の名作を通して、自らの喪失感や怒り、罪の意識について吐露したり、
作品に対する鋭い意見を投げたり、異なる意見の持ち主の話にも耳を
傾けるようになっていく。そればかりか、通路や体重測定の場で、課題
の本についてどう思ったか、 と話したりするのだ。やがて、仮釈放され
た者たちの中には社会更正施設で働きながらも地元図書館で読書会
への参加希望するものも現れる・・・・
これは、穏やかな性格で非常に調和を重んじるとされるカナダの国民
性も関係していて、他の国や社会環境ではそうはいかない、とする考
えもあるだろう。実際、作中でも囚人のトラブルで読書会が延期になっ
たりすることが語られる。
しかし、アリストテレスが言ったように「すべて人間は生まれながらにして
知らんことを欲す」(『形而上学』)だし、読書会の醍醐味は世界の見方や
意識を教える手伝いをしてくれることにある。彼らは正に、読書会に夢中
になりながら、少しずつながら「心の中で何かが」変化していったのだ。
本好きや読書会が好きな人には、充実の一冊になると思います。
早速の対応、ありがとうございます。
返信削除お手数おかけして申し訳ありません^^;
では改めて、はじめまして^^
拙ブログにコメントをありがとうございました。
私はこれまで、読書会=ハイソとイメージがあり、
それとは対極にある刑務所でそれが行われているいることにまず驚きました。
しかし泰然さんが仰る様に"読書は、心の飢えを満たす行為"なのですから
読書会を最も必要としているのは、まさしく彼らなのかもしれませんね。
僕の中にも読書会=意識高い系というのがありました(苦)
削除けど、思い起こせば小学生の課題図書発表のように気持ち
の自然な発露による「成長」を促すものと思うんですね。
私も読書と映画好きなので今後とも遊びに来てください。