臼井隆一郎『コーヒーが廻り世界史が廻る』(中公新書)
9世紀頃にイスラム神秘主義(スーフィズム)の秘薬として飲まれたと
される、コーヒーが時代を経て1652年・ロンドンに一軒の粗末な空間
として生まれたコーヒーハウスが次第に金融や言論と文化のセンター
となって世界史を廻しはじめた黄金期の華やかで青臭い前半部分。
第一次世界大戦にて敗色濃厚のドイツのコーヒーの背後にあった暗い
歴史(戦後は戦勝で潤沢にコーヒーハウスを味わえるはずが、戦後の
ドイツの現実は天文学的インフレと大衆文化主軸はビア・ホールであ
ったことと、若き日のあの独裁者は神経性の失明から奇跡的に回復
したことが記される後半部。
著者をして、かくしてコーヒーとは「近代市民社会の黒い血液」
ところで、この写真はどこの大阪のコーヒー屋さんでしょう?
正解は、丸福珈琲本店(写真上)、ALL DAY COFFEE (写真下)です。
お察しのとおり、近代市民社会の血液は、有名老舗である丸福珈琲と、伝
統的ドリップの末裔であるサードウェイブのコーヒースタンドになって生きて
おります。そんなことを、思いながら、熱い珈琲をすすってみるのも、また、
良しなのではないか、と僕は思いますよ。
鼻腔に入る薫りもまた、違った奥深いものになるかもしれない。
なぜなら、コーヒーを飲むことは「近代社会の黒い血液」を飲むことだから。
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