「新幹線劇場」には、三つの役が必要です。
役者。
大道具と小道具。
案内。
そして、
この劇場の主役は、なんといってもお客様です。
すべてのお客さまに新幹線の旅を心地よく感じてもらえるように。
私たちの夢はその心と共にあります。(p.131)
清掃業はいわゆる「3K」の職業と言われる。
僕も職務柄、経験があるのだが、施設の清掃洗浄作業は、基本的には
キツイ、汚い、危険が付きまとう。もちろん、サニテーション(衛生管理)
は、飲食・施設・食品業界の品質保証に直結するので、手を抜くなどは
ご法度ですが、「出来ていて当たり前の品質」なので、なかなか世間の
持つイメージと、そこで働く個人のモチベーションが高まりにくいのが現
状と思います。
総合的品質管理(TQM)の考えを借りれば、お客様の期待を超える「魅
力的品質」でないと、「3K」のイメージの壁を越えることは難しいのです。
ただし、現場(オペレーション)は座学で習えることは少なく、そもそもと
して、オペレーションが戦略たり得るのかという疑問を持つと思います。
著者の遠藤功氏は、早稲田大学ビジネススクール教授で、現場力の実
践的な研究(オペレーション戦略)を行っている人です。
鉄道整備株式会社。通称テッセイの名前で親しまれている会社は、メデ
ィア報道で見られたかたも多いと思います。清掃の手際の良さ、礼儀の
良さも半端なし、整列してのお辞儀で清掃完了のお出迎え、かっこいい
など、様々な方面(特にネット上も)から賞賛の声が集まっていますね。
わずか7分程度で新幹線車内を清掃し、「おもてなし」するチームです。
見事にオペレーション(現場力)を経営戦略として成り立たせています。
清掃作業を終了後に一礼して乗客を迎えるスタッフ |
この本で、「新幹線お掃除の天使たち」と呼ばれる従業員たちの会社は
今でこそ新幹線清掃のプロフェッショナルとして今でこそ名を馳せていま
すが、昔は「しょせん自分たちは清掃員」という意識がどんよりと蔓延して
いるように見える、会社だったと、テッセイの仕掛け人の矢部輝夫さんは
着任当初に思ったという節は、感動品質は一日でならずを感じさせます。
現場クルーが経験した心温まるストーリーの第1部と、テッセイが生まれ
変わるまでの2500日を描いた第2部を通して、どのようにして「世界一の
現場力」が生まれたかを読み進めるうちに、スタッフの心優しさや清掃の
プロ意識を通じてきっとあなたも、また新幹線に乗りたくなると思います。
泥酔して従業員にイタズラをし、シートでぐるぐる巻きに処置された客の
話もありますが(苦)、こんな機微を通して、オペレーション戦略(現場)
の経営学と、温かい人間味を学べることが出来るお勧めの一冊です。
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