特に思い出深いデパートの一つに、大丸心斎橋店が
あります。
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計の本館は、ゴシッ
ク風ながらもどこかオリエンタルなスタイルで、豪華
な装飾の店内に入ると、日常から一気に異世界へ
引き込まれるような感覚を覚えたものです。
(p.114 あとかぎ)
デパートと言うと、皆さんはどう思われるだろう?
楠木建さんの『ストーリーとしての競争戦略』の一説を拝借すると、1960年
代の小売業の王様で「家族で半日楽しめる行楽地」の最右翼であったが
エンターテイメントが増えた近年は一環して長期低落傾向のイメージになる
と思います(経済史的にはで、他意はありません)。
一方、大正・初期昭和レトロの世界観に心を躍らせる方もいるでしょう。
大丸心斎橋店(改築中前) |
本書は虚構の20世紀初頭の「三紅百貨店」を舞台にしたイラスト
及び短編漫画集です。近代ロマンと和風色を基調にしたモダンで
ロマンティックで艶やかで美麗なレディたちが描かれてあり、読者
を追憶的(ノスタルジック)な世界へぐいぐい引き込んでくれます。
本書は「読みもの」というよりかは、「観るもの」に近い気がします。
読んでいて感じさせるのは懐古趣味的でいて、作者が
大丸心斎橋の店で感じた「異世界」の美的感覚を現代
解釈しながらリスペクトしようとする純朴な姿勢ですね。
レディたちだけでなく販売品の描写も美しく、まるで百貨
店の紹介カタログを読んだり、ウィンドウショッピングを
しているような気分になります。また、蛇腹格子の内扉を
開閉する手動式エレベータ(昇降機)をお客様にとっては
イベントであったとする本質を捉えた説明があって憎い。
郷愁(ノスタルジー)と空想(ファンタジー)は真逆の関係であるはず
なのですが、実は共通する一つの世界像にあります。なぜなら郷愁
も、空想も「今ここでは希少なもの」を飛翔させて解釈しようとするこ
とだからです(モダンガールや販売品の美麗さや艶やかさなど)。
百貨店はその飛躍した世界観が交差する夢なことが伝わる一冊です。
おじゃまします(^^)
返信削除非常におもしろそうな本ですね。
以前から大正ロマンなどに興味を持っていて、
最近は流通と建築の観点から
百貨店や大型スーパーにも興味があります。
なので、丁度私のツボにハマりそうな作品です。
見ているだけでおもしろいというのもいいですし、
短編集というのも理想的です。
いずれ読んでみますね。
最近、こちらのブログを拝見するようになったばかりですが、
ぜひとも私のブログのリンク集に泰然さんのブログも
加えさせていただきたいのですが、
よろしいでしょうか。
リンクありがとうございます!
削除大したブログじゃありませんが、今後ともよろしくお願い
します。