宝島社このマンガがすごい2017<オトコ編>で
第2位にランクイン。連載開始されるやいなや
「漫画史上最も美しい第一話」と絶賛、書店員
の評価も高い声が相次ぐ作品との情報が気に
なり、僕も手に取りました。
スポーツ用品会社に勤める、多和田聡子(30
歳)の朝は体温計から始まる。なんとなく続け
8年目になるが、やめられないまま。会社には
上司で大学生時代に彼氏だった椎川がいて彼
の言動が気に障る日々。
ある夜、椎川からの仕事飲みを断った聡子が
公園で缶ビールを憂さ晴らしに飲んでいるとこ
ろにサッカーボールが転がってきた。フットサー
クル所属だった彼女はほろ酔いと半分条件反
射的にリフティングの実技指導をしてしまう。
しかし、ボールの持ち主は毎朝通勤途中でサッ
カーの練習をする男の子と思っていたが、彼は
美少女と見まがうほどの美少年だった。
ある別の夜、再び公園を偶然に通った聡子
は、不審者に腕を捕まれている少年を目撃し
助ける。そして彼女は、12歳の少年……早見
真修(ましゅう)に、毎晩サッカーを教える約束
をする。
ここに2人の其々の孤独と名前の無い関係性
と感状が寄り添い会う不思議な物語が始まり
ます。
著者によると、「美しいものを、自分の手が届かないところ
からじっとのぞき見たい」というところからスタートしたお話
です(このマンガがすごいWEBより)とのことで、丁寧な心理
と感状の描写、年相応の感状に揺れる聡子のモノローグや
真修の表情の変化(子供らしさからオトコらしさまで)などの
微細な要素が、じっとのぞき見たい、というよりも2人の日常
を静かに見守りたくなる作品に仕上げています。
特に第1話で登場する毎朝の体温計測定というセンシティブ
な要素が最後にふたりの心の中にある孤独を浄化していく
流れは、美麗で秀逸だと思います。この作品は他にも携帯
ストラップや、ラムネ瓶のビー玉、花火、カーラジオ(岡本真
夜、ジュディアンドマリーという選曲はふたりの世代間表現と
して、さりげなく上手いなぁと思う)など様々な小さい要素が
物語りを巧く彩っていて、自然に感情移入させられます。
このあたりは、女性作家らしい視点の為せる技ですね。
もちろん、ふたりの衝撃的年齢差からくる世間体などのシリ
アスさも描かれていますが、恋人でも家族でもないがお互い
にとって、お互いが必要なのだと思わせてしまうのは、著者
の表現力もさることながら、愛着のなせるワザで、主人公の
聡子に「あの子に色々与えようとしたつもりが 私のほうが
あの子からたくさんもらってしまってたんです」と人間関係と
心の琴線に触れるセリフを言わしめていることからも、この
作品を安易におねショタ漫画に分類するのはどうかと思い
ます。
余談ながら、著者のスマホにはリバー・フェニックスや『太陽
と月に背いて』の頃のレオナルド・ディカプリオの画像がある
とのことで、映画ファンの視点でこの作品を読んでいくうちに
彼女は良い教養を持っている(純粋に褒め言葉。リバー・フェ
ニックスがまだ生きていたら映画と美青年の歴史がすこし変
化したかもしれないと、個人的には思ってます) からこそ描
くことが出来た、早見真修少年の純真さとカワイイらしさなの
だろうと納得しました。
月刊アクションで連載中で、今後の展開が楽しみです。
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