の討論と比べて作文答弁で面白みがなく、その
後、英国式を参考に議会答弁を改善(結果は別
として)した記憶があるが、僕個人の感覚では日
本国内でヨーロッパ関係の書籍は企画しても需
要が少ない気がする。
著者のブレイディみかこ氏は、96年から英国在
住の保育士兼ライターで、 本書は2014年3月か
ら、2016年2月までの英国と欧州の混迷を「労働
者階級(地べた)」からレポートした一冊です。
この本の題名を見て、ピンときた人も多いと思いますが、題名の
元ネタはUK音楽史上に名を残すパンク・ロックバンド、ザ・クラッ
シュの名曲『ロンドン・コーリング』です。著者自信も日本在住の
ころからパンク・ロックに傾倒(特にジョン・ライドン)しており、政
治のルポながら同書の節々で述べる意見には、パンクの精神が
打ち出されているのが特徴です。
ここでいうパンク精神とは一般的に次の意味を指すと思う。
Anyone Can Do It=誰だってやれる.
Do It Yourself=既成概念に囚われずに
貧困でも尊厳はあるとする、キリスト教文化が根底にある欧米の
社会は、特に英国における労働者階級ヒーローや、生活保護の
申請も今は他人の力を借りるが、次を目指し頑張ろうとする態度
と見るが、逆に日本は貧困は恥とする意識が先立つのか、申請
すら躊躇うものが多いし、著者の次の論点は実に鋭い。
イエス・キリストというナザレの日雇い大工は「人はパンだけで生きて
いるのではない」と言った。欧米ではそれが「パンだけでなく薔薇もく
ださい」という「パンと薔薇」(引用者注釈:プロテスト・ソング)の歌詞
につながっていくのだが、日本人の「米と薔薇」は米ばかりこだわり
すぎて、薔薇も米の変形だと思っていたかもしれない。
(中略)
だが、薔薇とはそんなものでない。ときには米を食らうことを拒絶する
ほど厳かで烈しいものであり、テーブルの上から垂れてくる誰かの食
べ残しを受け取ることを良しとしないものだ。
同書は英国の貧民街では、一日三食を食べることが出来ない
子供たちのために学校やコミュニティセンターで、無料で朝食
を食べさせる事前団体の存在や、食品会社はコーン・シリアル
のパッケージに子供の飢餓を根絶させるキャンペーンの表示
をしているなど、 先進国でありながら貧富の格差で貧困国並
みの暮らしがあることの報告から、スタートする。
読んでいて、正直、目眩がした。単純に日本と比較するのは
どうかとも思うが、欧州の左派勢力の迫力は、我が国のそれ
と比べて桁違いな気がする。著者は言う、「もはや右対左の
時代ではない。下対上の時代だ」と。わが国でも奨学金の
返済負担や、地方経済疲弊、ワーキングプアなどの問題が
取り上げられるが比較するとどうも温度差がある気がする。
米と薔薇、すなわち金と尊厳は両立する。米をもらう代わりに
薔薇をすてるわけでもないし、米を求めたら薔薇が廃るわけで
もない。むしろわたしたちは、薔薇を胸に抱くからこそ、正当に
与えられてしかるべき米を要求するのだ。
気になったので聖書を紐解くと、「わたしの目にはあなたは高価で
尊い。わたしはあなたを愛している」(イザヤ書43章4節)や、「わ
たしはあなたがどこに行っても、あなたと共にいる。あなたを守る。
あなたをこの土地に連れ帰る。わたしはあなたを決して見捨てない」
(創世記28章)などから欧米社会における人間性の尊厳の基盤とな
るものが読み取れるものの、わが国古来の人間尊厳の基盤は何で
あったか? と、みかこ氏の同書を読み返しながら思案させられた。
欧州の地べたから、日本を、そして貧困白人層の問題を背景に宿す
トランプ政権の登場の経緯を伺うことが出来る、ノンフィクションです。
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