し、90年代のブリットポップ終焉と、その後
のギターロック不況を壁を乗り越えてきた
UKの国民的な労働者階級バンドと言え
ば、ステレオフォニックスの他ないだろう。
前回の記事で紹介した、『ヨーロッパ・コーリング』でも今や
UK音楽シーンのチャートを占めるのは高額の授業料を払う
ミュージシャン養成学校を卒業した、ミドルクラス以上の若
者たち、という実情が述べられており、これはビートルズは
無論のこと、セックス・ピストルズ、ザ・スミス、オアシスなど
名だたる労働者階級ロックンロール・バンドの後釜が登場
しない文化的危機として嘆く人も多いだろう。
同期のバンドが去っていくなか、ステレオフォニックスは王道
と普遍のギターロックを鳴らし続けてきたバンドで、 UK音楽
の特徴の一つである「ひねくれ」感がない。彼らが敬愛する
影響を受けたバンドは、AC/DC、レッド・ツェッペリン、エア
ロスミス、ZZトップ、ゲーリー・オールドマン・ブラザーズなど
骨太で男臭いサウンドばかりだ。(田舎出身の彼らにとって
入手可能な音楽は、メジャーなものしかなかっただろうことも
想像できるのだが、これはまた別の話しで)。
彼らの音楽を簡単に分類すると、ポップで力強いストレートな
ロック(あるいは米国の初期パールジャムのような70年代調
のハードロック)、古典作品への敬愛を感じさせるアメリカの
ルーツ・ミュージック、叙情的でスペクタクルな曲群(特にスト
リングスが効いている8枚目のアルバム)からなっています。
今回紹介する曲は、映画『クラッシュ』(2005年アカデミー賞作品賞受
賞)のエンディング曲として使用された、「Maybe Tomorrow」です。
米国南部のルーツミュージックに影響を受けた曲で、歌詞の内容は
暗めですが、ポジティブで成熟した空気に覆われたブルース曲に仕
上がっています。
こういう普遍で古典な曲を書けるUKバンドは再び出るだろうか?
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